BALLON JOURNAL VOL.8

BALLON JOURNAL VOL.8

私達はきっと旅に出たかったのだと思う。

アロマオーナメント発売から11年目の11月に。

 

20091120日、BALLONでアロマオーナメントを発売開始された日です。
私達にとって会社の設立記念日よりずっと大切な記念日かもしれません。

あれからかれこれ11年が経ち、私達は今もアロマオーナメントを作り続けています。新たなデザインや商品、技術や素材など、様々な人との出会いやスタッフのたゆまぬ研究と努力により、製造方法やできること、生産数量なども今も刻々と変化させながら。
 

BALLONの歴史は東京都渋谷区のたった16㎡のワンルーム事務所から始まりました。

当時の仕事はWEBのデザイン。

フリーランスのチームでしたが、今思えばチーム結成した2001年からデジタル媒体の「後に残らない感じ」や「手に触れられない感じ」やものすごく速い技術や業界の進歩のスピードが少し自分には合ってないな、とは全員が感じていて「次にやりたい何か」についてずっと話していた気がします。

刺繍にはまってみたり、アクセサリー作りに凝ってみたり。
WEB制作の仕事の合間に、いろいろなプロダクト制作の試作の試作、のようなことを何度も繰り返した日々が数年続いた後に私達が行き着いたのがアロマオーナメントでした。

フランスで見つけた「香りのオブジェ」はちょっと香りがきついから、最初は香りをつけずに自分が使いたい時に自由でつけられたり、昔からオーソドックスに存在したシンプルなアロマストーンにデザイン性を持たせることができたりしたら、素敵じゃない?

始まりは当時のデザイナーから発されたこんな話からでした。

 

 

 

 

当時は石膏の素材としての特性も知らず、ミニフィギュアの石膏像にアロマオイルを垂らして「染みこまないな」となってみたり、オーブン陶土で試作して、素材としてのイメージの違いに頭悩ましたり。陶器用の電気窯を買おうとしたこともあります。(思えば16㎡のワンルーム事務所のベランダに置けるわけがないのですが。)

最後に私達のアロマオーナメントのイメージにぴったりの素材は石膏なのだと教えてもらったのは、陶芸教室にサンプルの素材を持ち込んで「これが作りたいのですが、こちらで教えていただけますか?(当時は陶器だと思っていた)」と聞いたとき。

「これ、石膏ですよ。」

素焼きで作るつもりで駆け込んだ、陶芸教室の先生に教えてもらったのがきっかけです。
笑い話のような、本当の話。

その帰り道、東急ハンズで石膏の粉を棚の片っ端から大人買いし、そのまま事務所に戻り、石膏を水に溶き、固めたものにアロマを垂らした時の感動は今も忘れられません。石膏が型の中で固まるまでの待ち遠しい気持ち。そして初めて石膏にヤスリをあてたとき、まるでこれまでも長い間やりづけてきた作業のような懐かしい手の感触。すっかり石膏の虜になったといっても過言ではありません。

そこからはまるで何かに取り憑かれたように石膏の研究と試作が始まりました。気泡や表面の荒れ、製品強度にデザイン。シリコン型の作り方やベストなシリコン素材など。


2009年、9月の初旬のことでした。

毎日その作業に完全に没頭できるだけの時間があったのかというと、当然ながらそういうわけではありません。当時、私達のメイン業務はあくまでもWEBの制作。様々な企業のWEBサイトの制作を請け負っていたので、納期までに色々と制作作業もこなしていかなくてはならない中での石膏の研究と商品企画、そして製造という工程です。


石膏の出会いをきっかけに、WEBの制作をできるだけ効率的に切り上げ、毎日夕方になって一段落つくとMacにビニールシートを被せて石膏を練り、削り始めるというある意味二重生活の始まりです。実際にWEBの制作事業は2014年頃まで続きました。

 

 

 

BALLONというブランド名はアロマオーナメントの発売よりずっと前から決まっていました。「Le Voyage en BALLON(邦題:素晴らしい風船旅行)」のイメージからとった名前です。冒険しながら、時にはのんびりと、気球に乗って世界を旅する、そんな古い時代のフランス映画。仕事の関係上、Macの前にじっと座っている時間が長い私達は、世界を旅することに少し憧れがあったのかもしれません。

次々とふりかかってくる課題に頭悩ませながら、失敗しながら、乗り越えながら・・・気がついたら11年。その日々の課題に取り組むこと自体が、まるで一つの冒険に満ちた旅のようです。

月日は百代の過客であり、行き交う年もまた旅人なり。

残念ながらBALLONを立ち上げ、アロマオーナメントを最初にデビューさせたチームと今は顔ぶれが変わってしまったけれど、あの頃のBALLONを知っているスタッフが今も現役で頑張ってくれていることもあり、そのころに作った基礎が今も色濃く残っています。

そして、BALLONの旅はこれからもずっと続いていきます。
積み重なる日々の歴史を純白の石膏と香りに乗せて、航路も地図もなく。
初めてお客様に商品をお渡ししたときの、それまでに感じたことのなかった喜びを胸に。

そして、これからも時々思い出すのでしょう。

ガチャガチャの樹脂製の石膏像を本物の石膏と勘違いしてアロマオイル垂らしてみたら、なんともみっともない姿になって大笑いしたなぁ、とかね。



Creative Director IZUMI SUZUKI

 

 

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