夏といえばスイカ。あの少し抜けた感じというか水っぽい感じのウリ科特有の匂いに甘みが混ざった独特の香りを嗅ぐと夏を思い出す。いくつかキーノートとして用いられている香水があるのだが、夏以外売れるのだろうか。心配になる。
スイカは種なしの方が食べやすいけど、未だ種ありの方が遥かに多く売っていないだろうか。これは種の保存のため種ありが生産されるのだろうか。それとも種ありの方が美味しいのだろうか。ブドウは種なしも結構売っている気がするのだけれど。
個人的には、皮の白い部分ギリギリのところの果肉がなんか固くて好きである、サクサクして美味しい。時間が経って果肉がふやふやになったのは美味しくない。この前、モダンスリランカ料理を食べに行ったら焼いたスイカが出て来て面食らったが、食べたら美味しくてびっくりした。実はスイカは焼いても美味しいことを知った。
ところで1980年代、空前のキョンシーブームだった。一応キョンシーを知らない若年層のために説明しておくと、中国のゾンビみたいなもんで、お札を貼られて死体が道士によって操られているモンスター。手を前に出し、ぴょんぴょん飛びながら前進する姿は35歳以上なら絶対誰もが真似したはず。
当時映画や漫画、ドラマなどいろいろつくられていた。その一つ『幽幻道士』は少年少女のためのキョンシードラマでとても面白かった。道士は老荘思想から派生した宗教・道教の徒で、仏教の僧みたいな職業で、キョンシーを退治していく。登場人物にスイカ頭という(多分頭がスイカのように大きいという理由から名づけられたと思う)男の子がいた。頭をかち割られた状態をスイカを割ったようと形容されることを考えると、少々グロテスクな表現と今では思うのだが。
スイカ頭は、ぽっちゃり系の三枚目で愛らしいキャラクターだった。主人公の少女道士テンテンと彼女の祖父の道士にスイカ頭ら少年たち仲間がキョンシーを倒していくという分かりやすい内容なのだが、シリーズ2にてスイカ頭は全身にダイナマイトを括り付けて自爆してしまうのだ……そしてシリーズ3ではなんとキョンシーとなって出て来る。シリーズ中味方の中で唯一死ぬのがスイカ頭だった……のだが、最後のシリーズではテンテン以外全員死ぬという子供向けの番組にしてはかなり凄惨な終わり方でびっくりしたことを覚えている。テンテンを生かすために祖父が力を振り絞って彼女を空間移動させ、続くように終わるのだが、続編は作られていない。今調べてみると制作会社が倒産したため、打ち切りになったようだ。とても後味の悪い終わり方だった。
今秦の始皇帝を描いた『キングダム』のヒットや、ジャンプ+でキョンシー漫画『キョンシーX』が連載されており古代中国ブームかもしれないのだから、ぜひテンテンのその後を描いてほしい!
因みにスイカはシトルリンという成分が入っているのでとても健康に良いようだ。血流を良くするため、運動効果がアップし、アンチエイジングにも効果があるらしい。シトルリンはウリ科に含有されるのだが、ぶっちぎりでスイカの含有量が多い。もちろん水分もたくさん摂取できる。皆夏に限らず通年で、スイカをいっぱい食べるべきだ。そして幽玄道士復活を祈ろう。
by writer Mitsuhiro Ebihara