BALLON JOURNAL Vol.38

ショパンに愛を捧げた肉食女子

昨年の2021年はショパンコンクールに沸いた。2位の反田恭平、4位の小林愛実と日本人が2人入賞した他、セミファイナルにはユーチューバーでありポップスでも活躍、しかも開成→東大というインテリ学歴の角野隼斗を筆頭に、これからのキャリアが楽しみな若手・古海行子、進藤美優らが残るなど日本人が大活躍した回だった。

ショパンコンクールはチャイコフスキー、エリザベート王妃と並んで世界三大ピアノコンクールと目される。しかし注目度は圧倒的ではないだろうか。今回のショパコンの模様は常にライブ配信され、予選の模様が常にSNSで話題となったのはこの歴史あるコンクールが現代と歩んでいることをまざまざと感じさせた。

日本人はとかくショパンが好きだ。以前ショパンの旋律と、演歌のこぶしが似ているからと何かのテレビ番組でやっていたのだが、まあとにかく分かりやすい旋律が日本人の耳に心地良いのだろう。

ショパンは肺結核で病弱、39歳で逝った。その短い生涯の四分の一を共に過ごした小説家ジョルジュ・サンドとの関係は音楽史の恋愛譚No1であろう。サンドは、本名アマンディーヌ=オーロール=リュシール・デュパン。筆名として男性名を名乗る通り、男装の麗人で男勝りな肉食女子。ショパンの友人、リストとも関係をもったらしい。繊細なショパンは出会った当初、アバズレなサンドに良い印象は持たなかったようだが、サンドは彼にぞっこんだったようだ。そんな2人は約10年に及ぶ長い関係となった。

スペイン・マヨルカ島へ逃避行をし、その後サンドの出身地フランス・ノアンやパリで同棲。ショパンはサンドと過ごした時において、『スケルツォ3番』『24の前奏曲』『バラード4番』『ポロネーズ6番英雄、7番幻想』『舟歌』『ソナタ2番、3番』などなど、コンサートのメインを飾る傑作中の傑作を生み出している。まあ長いこと一緒にいるのだからそりゃそうなのだが。

サンドはショパンを愛し抜いていたのだろう、女傑ぶりとは打って変わり、家事をこなし、看病に身を捧げた。彼女のおかげでショパンは余裕ができ傑作を生みだせたと考えられる。しかし、回復せず弱っていくショパンに対して、やがて2人の関係は病人と看護師、母と子のようになってしまった。そしてサンドの子たちが起こしたアクシデントにより2人の間の溝は決定的になり、関係は解消された。ショパンは別れた後もサンドの髪を携え、手紙はすべて保管しておいたという。サンドは気にしつつも会おうとせず葬儀にも参列しなかった。女としての矜持を感じさせる。

ショパンはショコラショーとチョコレートが好きなスイーツ男子だった。ショコラショーにはスミレの砂糖漬けを入れて飲んだ。サンドは毎朝ショコラショーを淹れ、ショパンの病床に出したという。寒い2月、そしてヴァレンタインという愛のイベントにぴったりなチョコのドリンクだ。ちなみにお菓子大手の明治製菓には10年位前にショパンというチョコがあった。フランス語を用いたちょっと気取ったショコラだった。ショパコンに沸いている今復活すれば、ヴァレンタインで売れること間違いなしと思うのだが(笑)。


by writer Mitsuhiro Ebihara