BALLON JOURNAL Vol.34

BALLON JOURNAL Vol.34


BALLONを愛するクリエイターたちとクリエイティブディレクター鈴木いづみが、香りにまつわるエピソードや日々のライフシーンについて言葉を交わす「BALLONと私」。第2回は、BALLONのアニメーション動画を手がけるデザートカンパニーのディレクター新井菜々さん。1120日に公開されたばかりの第3作を始め、モノクロームで描かれる白昼夢のような映像作品の世界を掘り下げた。

 

アニメーションで描かれるファンタジー

気球に乗って不思議な旅へと誘うBALLONのアニメーション動画。ちょうど1年前に始まったプロジェクトは、2021年のホリデーコレクションのテーマ「森の奥の奇妙なパーティ」を物語にした第3作へと、シリーズを重ねるごとその世界を広げてきた。デザインを担当する新井さんとはBALLONを表現するにあたり、毎回、感度の高いクリエイティブな対話があるという。

「エキシビション用としてアロマオーナメントの製作過程を映像化したことはあったんですが、ブランドのイメージを伝えるムービーを制作したのは1年前の作品が初の試みだったんです。デザートカンパニーさんからいただいたアニメーションの提案は最初からBALLONの世界観をとらえていて感動しました」(鈴木)

 

夢見るようなカラフルさよりも、少しシュールで、ダークな一面も漂う奥行きのある世界。「伝えたいことのエッセンスだけ」をリクエストしたオーダーに、新井さんがストーリーを膨らませ繊細なタッチで落とし込んでいく。例えるなら、『うろんな客』や『おぞましい二人』などの作品で知られるエドワード・ゴーリーの、モノクロの線画で描き出される絵本の奥深さ。

BALLONのコンセプトを知り、目からも香りを楽しむ石膏のアロマオーナメントと聞いて新しいなと思いました。石膏というとデザインや装飾品としてのイメージしか持っていなかったんですよね。全体に色味を押さえた商品との統一感が出るといいなと感じたので、私もモノクロームでのアニメーション化に賛成でした。個人的にもエドワード・ゴーリーの作品世界は好きだったので、BALLONの表現したいイメージはとらえやすかったです」と新井さん。

色彩のないBALLONのアニメーションにはしかし、想像力を掻き立てる自由さがあり、観る者を瞬時に異次元へと誘ってくれる。「リアルな現実とBALLONの不思議なファンタジーの世界を線引きする」(鈴木)白と黒の表現。そして、物語の全編が、制作に約2カ月を費やす緻密な作業工程から作られている。

「大きな流れとなる物語をいただいて、そこから細かなストーリーを作って絵コンテを仕上げる。私自身が楽しんで制作しています。商品はスキャンニングしてすべてCG化して、背景のCGを鉛筆画風のテクスチャーにしたり、逆に手描きで描き込んだり。木々の揺れや、一から作ったキャラクターのリギングなど、毎回新しい課題が出てくるので、実験を繰り返している感じです。でも、最後でき上がったときに必ず頑張ってよかったなと思いますね」(新井さん)

鈴木もまた「テーマをどう解釈してストーリーにしてくれるのか毎回ワクワクしますし、必ず想像を超えてくるんですよね。音楽の選曲も素敵なのでぜひそこにも注目してもらいたいです」と、新井さんが映像化するBALLONのおとぎ話を楽しみに待つ1人だ。

 

気球に乗って架空の街からBALLONの夢の世界へと旅立った第1作『世界を旅する気球〈BALLON〉の不思議な旅』、バラの国の小さき人々が働くファクトリーの物語を描いた第2作『ローズガーデン&ファクトリーのファンタジー』。そして、ホリデーシーズンを彩る待望の第3弾『森の奥の奇妙なパーティ』が公開された。

 

「今年のホリデーコレクションは、とある国の森の奥でそっと静かに開かれる大事なパーティから連想したんです。派手なお祝いではなく、この一年の締めくくりに大切な人と過ごす、暖かく、そして少しクローズドでパーソナルな時間。それで『森の奥の奇妙なパーティ』というテーマが生まれました。アロマキャンドルやバスソルト、クリスマスリース。サシェオーナメントは、アンティークの図録から取った50種類の素材から6種に厳選したクリスマス限定のモチーフになっています」(鈴木)

そのサシェオーナメントのひとつでもあるエリザベッタが、動物たちを招いて開く森でのパーティ。リースを飾った扉の向こうには、森の奥に集まってくる動物たちとエリザベッタのシルエット。モノクロームに、キャンドルの灯りだけがほんのりと色を持って浮かび上がる。

 

「今回はアニメーション全編を描き出しました。こんなに描いたのは私も久々で本当に楽しかったです。特に好きなのは、森を歩くユニコーンの影が歩き去ってからテーブルの前にも人物の影が通り抜けていくシーン。流れている中で前後に分けたつなぎのシーンが緩急になって、気持ちよく仕上がったなという気がしています」と新井さん。

バスソルトをどう登場させるかを考え「ユニコーンにシャワーを浴びさせてみよう」といった具合に、ミーティングでは毎回、新井さんと鈴木の間でアイデアが飛び交う。鈴木のおすすめは、サシェオーナメントでも一番のお気に入りだというラストの「月の場面」。空に浮かぶ満月が微笑みながらウインクを飛ばして、小雪の舞うクリスマスパーティは幕を下ろす。

「私が映像を作る側だったら、あのシーンでガッツポーツを決めたと思うくらい(笑)。肖像画のエリザベッタが実は人知れずまばたきをしていたり、新井さんが最後まで苦労したというクリスマスツリーを売るDr. SANTAがやってくるシーンなど、ディテールまで本当にこだわって作られているんです」(鈴木)

日常から少し離れて、誰もが魔法にかけられたようにファンタジーの世界へと身をゆだねる聖なるクリスマスの夜。今年はBALLONの不思議な森のパーティにそっと迷い込んでみてはどうだろうか。

 

[[プロフィール]]

新井菜々(あらい・なな)ディレクター。入社歴は4年、デザートカンパニーにてデザイナーとして活躍する。着物が趣味で、シェアハウスの和室に暮らすという自宅には金木犀の香りが漂う。BALLONの金木犀のバスソルトも愛用中。

 

 

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