BALLON JOURNAL Vol.30

BALLON JOURNAL Vol.30

BALLONを愛するクリエイターたちとクリエイティブディレクター鈴木いづみが、香りにまつわるエピソードと日々のライフシーンについて言葉を交わす「BALLONと私」。第1回は、BALLON JOURNALにて音楽や文学、映画をテーマにしたエッセイを連載する編集者の海老原光宏さん。心の琴線に触れる香りやアートの世界について、ともにフレグランスを手がけるクリエイターとして共鳴し合う感性など、前後編にわたりその美意識の源泉を語り合った。



ジャーナルが伝える深淵なる世界〈前編〉


BALLON JOURNALがスタートしたのはちょうど1年ほど前のこと。それ以前は面識がなかったというのに少し驚いてしまうほど、ひとたび香りについてとなると2人の会話は笑いを交えながらも止まらなくなる。

「初めてお会いしたときからそうだったんです。海老原さんは今日みたいに全身コム デ ギャルソンの真っ黒な出で立ちでやってきて。ジャーナルでお願いしたいことを細かく説明せずとも、これってそうだよね、とすぐに理解し合える気持ちのいい会話のキャッチボールができました」と鈴木。

「その時に、ご自身のフレグランスブランドの立ち上げについてもうかがって。すぐに意気投合したのはその表現したい世界観が美しかったから、というのもあったかもしれません」と振り返る。


 

海老原氏も同様だ。「BALLONにはいい意味でのスノッブさがあると感じました。クラシカルでありモダンであり、格調高さがある。フランス語から取ったブランド名に込めた意味など、はっきりとしたステートメントがあるブランドで、私自身もその世界観を汲み取りやすかったです」

毎回、季節に合わせたテーマを伝え、「あとは海老原さんに自由にお任せしてます」(鈴木)という。「仕上がった原稿は一番に私が目を通すんですが、海老原さんの解釈は驚きがありながら、BALLONというブランドが奥に持つ深遠さとしっかり結びつく。『どうして好みがわかるんだろう』と、いつも一読者として私が楽しませてもらっています」

旅立ちの春にはマツリカの香りと共にカミーユ・サンサーンスのピアノ協奏曲第5番『エジプト風』を。雨の季節には武満徹が作曲した『雨の樹素猫』、夏夜の涼にはアルフレッド・ヒッチコック監督作『鳥』など。父の日に漫画『美味しんぼ』の雄山・士郎父子を取り上げた粋なアレンジもあった。海老原さんの言葉を借りると「王道よりも意外性のある、ほんの少し陰な要素を持っている」作品の数々。

 

BALLONは石膏のディフューザーというあまり一般的ではないアイテムを提案しているブランドなので、興味を持つ方と通り過ぎてしまう方とにはっきりと分かれるんです。ピンとくる方はすでにかなりのフィルターを通した後。ジャーナルも、そうしたコアなお客さまが楽しみにしてくれています」と鈴木。

そうしたブランドのあり方にも共感すると海老原氏。「何かを発進するときに、大多数ではなく、わかる人に向けて響くように作る、その姿勢がいいなと思うんです。マス向けはマーケティング的にも大企業でないとできないわけですから」

映画や音楽、文学作品を通した、BALLONを愛する人たちとの対話。鈴木の願いは「私たち発信する側とそれを心待ちにしてくれている側とのコミュニケーションとなり、一緒に世界を作っていけたら」ということ。

ぜひ一度、BALLON JOURNALの深淵にふれてみてもらいたい。

 

〈後編〉に続く

[[プロフィール]]

海老原光宏(えびはら・みつひろ)編集者。雑誌、ウェブ媒体を経てフリーに。以降デジタルメディアやSNSの運営・コンサルティング、ファッション・アート系の編集執筆に従事。趣味はピアノ。

Instagram
@lanuit_fragrance

Twitter
@NuitMusique

 

Text:Aiko Ishii
Photo:Shiori Shimegi

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